Random thoughts of Ken Azuma

Managing Director - APAC region / Senior UI Architect at Infragistics

あなたが変えるべき世界が見つからないからといって焦る必要はない

たまにお仕事に関して若い方(って書き出しがジジイなんだけども)から相談を受けることがあります。

よく聞く意見を挙げると:

  • 本当にやりたいことが見つからなくて焦っています
  • 土日も技術コミュニティに参加するほどのめり込んでいるやつに仕事で勝てる気がしません
  • 仕事にフルコミットしてるわけじゃなく、生活や趣味のために仕事をしてます
  • どれくらい楽に仕事できるかを考えています
  • もうなにもかもが決まってしまっていて、自分に変えられるような状況ではありません
  • 総合的にこの先自分が仕事でどうなっていくのかわからなくなっています

などなどです。多くのケースでは、かなり優秀な方からこういうことを聞くことになります。このところ色々とそのことを考えていたので、ちょっとまとめてBLOGで書いておきたいと思います。

有言・無言のプレッシャーを気にしない

まず最初にお伝えしたいことは:

仕事でフルコミットできなければ生きてる意味がない、といったモーレツ人間からの妙なプレッシャーは気にする必要がない

ということです。現状で40代以上の人の場合、多くがそう考えるのを美徳と考えていたり、とにかく成功したいという意思が強いゆえに多い意見だったのではないかと思われます。

前述のバレットで上げた項目全てに、胸を張って自分は全て違う!と言える人がどれだけいるのか。そんなもん、この進歩の早い世の中でそう簡単にわかるはずもありません。

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引用:ビジネスモデルYOU

仕事が天職(Calling)として見つかっている人は極めて稀であって、多くの人は生活の糧(Job)として、否応なく働いています。この状況をAIの進歩の先にあるベーシックインカムVer.100みたいなやつが解決してくれる可能性は大いにあると思っていますが、すくなくとも今はそうではありません。

じゃあどうしたらいいのかというと、まずは投入する努力が最小限で最大の報酬を得られることを考えたらいいと思います。自分が得意とするところ、あるいは一番器用にやってしまえるところを選ぶといいと思います。

ちなみに、上司との面談で将来をどう考えているのか?数年先のビジョンがはっきりしているのか?という類の質問を受けた際にも、それが見つかっていないことを恥じる必要もありません。だって見つかっていないんだし、そこでは見つけさせてもらって無いからです。とりあえずその面接は目をキラキラさせてうまく取り繕って切り抜けましょう。

すでに自分が心からコミットできるようなことが見つかっている人にとっては、急激にその「フロー状態」とも呼べる状態が普通になってしまって、見つかっていない人に対して、「なぜ自分が楽しめることをしないんだろうか」という純粋な疑問を抱きがちです。創業社長の皆さんや、シリアルアントレプレナーの皆さんなんかは典型的です。あとはリクルートみたいな猛烈営業組織に所属していた人なんかもそうですね。見つからない状態がわからないか、さっさと忘れてしまっているだけなんです。

なので、これらの人達がなにを言おうとも、だって見つかってないんだし仕方ないじゃん、と割り切ってしまってはいかがでしょうか。

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私もいまだ天職と思えるような仕事は見つかっていません。徐々に世の中のすべての仕事全体からということでいえば、範囲を少しは狭くなってやるべきことがある程度おぼろげに見えていると思いますが、完全に一点集中できるほど明確ではないと思っています。

これまでも、おそらくこれからもしばらくは「自分が一番楽をできる状況がどんなものであるか」ということを念頭に据えて仕事を選んで行くと思われます。天職を見つける、とかではなくて、楽するベストの道を見つける、というのであれば、なんとなく考えられる気がしませんか?

徹底的に「楽」をしよう

「楽」というのはいろいろな意味があります。労せず稼げる、仕事自体が楽しい、その環境でリラックスできる、などなど。

瞬間的な踏ん張りとしての残業などがあるかもしれませんが、その状態をずっと続けることなど不可能だと思っています。

 


引用元: https://note.com/gorolib/n/nc44358a800af

こちらは見たことがある方も多いかと思いますが、日本の「生きがい」という概念を海外の方が図示したものがオリジナルになる図表です。(私はこちらのNoteから引用させていただきました。ありがとうございます。)

前述のバレットでお話を聞いた皆さんは多くの場合3、あるいはC、「PROFESSION」あたりにいらっしゃるのではないかと思います。それって結構当たり前で、生きていくためにもそうなりますよね。「4」の需要という要素も関係あることでしょう。そうでないとあとでも書きますが「継続性」という意味でも難がありますし、換算される価値(多くの場合お金)も目減りしてしまいます。

問題は「1」の好きかどうかという点がどれくらい入るのかということですね。 

仕事が好きじゃなくても問題ないが、長く続けるとしんどい

仕事が「好きじゃなくても別にいい」と私もケースによっては考えていますが、「楽である」ことを求めて「楽であり続ける」ことを考えた場合、ある程度自分が好きなことでないと長くはやってられないということになるんじゃないでしょうか。

ここで問題になるのが「今の仕事でどれくらい長く働くのか?」「何歳くらいまで働くのか?」という問題です。人間はどうしても同じことを繰り返しやっていると飽きるので、楽であり続けるためには、結局自分がある程度でも好きと思って自発的に動けるような仕事でないと長続きしないという特性があります。

そうなってくると、これまでの経歴などをもとにして転職するなどの手段が見えてくるのですが、前述のチャートのCの状態でもこれをどんどん行うことができ、手取りも増えていく人はかなり稀有な存在なんではないかと思います。ある程度楽しめないと、楽をできないと仕事で蓄積することは難しくなってしまうと思うのです。

 よく話するのが駐車場の管理人に例えて「仮に駐車場の管理人として毎日駐車場のボックスに入り、掃除しながらずっとチケットを切り続けていれば年収1,000万円もらえるとしたらやるか(やり続けるか)」という疑問があったときに、中長期を考えてもそれでいいという人は少ないのではないかと思います。もちろん短期的にそれで貯金してやるというのはありなのかもしれませんが。

下記の図表は、「人生格差はこれで決まる 働き方の損益分岐点」という書籍から引用したものです。(改定されてタイトルがよりダイレクトになりました。以前は「僕たちはいつまでこんな働き方を続けるのか?」でした。)

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引用元:人生格差はこれで決まる 働き方の損益分岐点

仕事をする自分をP/L(損益計算書)で捉えてみることが紹介されています。得られる報酬や満足感を「売上」ととらえ、対価として提供する労働やある種の苦痛?を「経費」とらえ、その差分で「利益」が出る状態を「自己内利益」のある状態であると説明しています。もちろん、左の状態Aで有るべきです。最低でもイーブンでなければなりません。

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引用元:人生格差はこれで決まる 働き方の損益分岐点

仮に自己内利益がある状態Aであっても、時間とともに満足感は逓減していくため、投入する経費が変わらないのであれば「損が出る」状態が生まれます。まさにこの状態が長続きしない状況であると言えます。常に文句を言い続けている状態でもあり、精神的にもよろしくありません。

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引用元:人生格差はこれで決まる 働き方の損益分岐点

一方、BS(貸借対照表)でも考えてみることが大切だとも解説しています。P/L視点だけだと短期的な分析にしかなりませんが、誰しも資産を蓄積することで「稼ぐ力」を蓄積して、「明日も楽にできる状態」をどう作り出せるかがポイントになります。

資産もときに陳腐化してしまう可能性があるので、図表の中にも書いていますが何らかのポータブルスキルを身に着けていくことが重要になってきます。以前からこのブログでもポータブルスキルとしての英語をオススメめしていますが、

kenazuma.hatenablog.com

別に英語だけでなく、明日の自分を楽にし続けてくれるものなら何でもいいと思うのです。そして、このBS思考において「ある程度好きなことをやれているか」という点が資産運用の難易度を大きく左右することになります。好きであれば。基本的な楽指数?が高い状態なので、良いスパイラルで資産の金利も高い状態です。しかし、嫌なことをやり続けている状態ではマイナス金利にもなりかねません。

長期的に見れば、持続可能な状態を作るために再生産が困難な状況ではなくやりがいを見いだせるような仕事を見つける必要があると思いますが、このステージにおいても、必ずしも「世界を変える」必要などありません。とにかく「楽を追求」することを続けているならば、「労働が憎い」と思えるような職場に長くいることはリーズナブルではない選択だということになるかと思います。

選択肢は世代に関わらずほぼ無限に存在する

言わずもがな、現状では転職市場は非常に活発です。あるいは、副業すらも許可されることも多くなってくるでしょう。

このような状況では「楽を追求する」ことはこれまでよりもやりやすくなっています。自ら環境を変え、人に状況を委ねず、ひたすら最小限の努力投入で最大限のリターンが得られる状況を探すのです。想像以上に世界は広いので、視野を広げてみれば自己内資産を最大化できる環境、あるいは「仕事の楽しさを気づかせてくれる、拡大してくれる職場」が見つけられることと思います。

それまでは、「俺たちは傭兵だ、文句あるか?俺を雇っておいたほうがあんたのためだと思うぞ。理由はこうだ。」という感覚でいればいいと思います。もしかしていつか天下獲りたくなるかもしれませんよね?そうしたら一心不乱にP/LもBSも忘れて、獲りに行けばいいと思います。(それに気づいたらぜひ教えて下さい!)

でっかい世界だけでなくて、身の回りの小さな世界を変えたり、所属する世界を引っ越ししたりすることで、自分がもっと楽をできる環境は自分で生み出すことができると思っています。周りにいる転職に成功した方にでも話を聞いてみてください。

念の為に申し上げておきますが、もちろんP/LもBSも仕事の世界だけで作るものではありません。週末に真剣に取り組んでいることがあるならばそれでいいじゃないですか。その存在が資産の逓減を緩やかにしてくれたり、金利上昇のきっかけをくれることもあると思います。トータルでバランスが取れていて、トータルでプラスであれば人生楽ってもんです。ただ、7分の5がただただしんどい、というのではバランスが取りにくいことが多いですよ、というだけであります。

常々、天職は、雲の切れ目から急に光が指すように、確信を持ってある日現れるものと信じています。あぁ、これが私のやることなんだ!とわかるための道は、決して意識の高い崇高な聖なる道だけではなくて、思い切り楽をしようと考えるところにもあるんじゃないかと思い、このブログを書きました。ぜひ感想やご意見等教えて下さい。